府中まいまいず井戸

仕事で近くまで行ったので、前から見て見たかった府中市郷土の森の中の「まいまいず井戸」を見に行きました。

「まいまいず井戸」は、地表部をオープンカットしてその底に井戸を設置したもので、オープンカット部分に井戸へ降りるためのらせん状の通路が、カタツムリ(まいまい)に似て見えることから「まいまいず」と呼ばれるそうです。「ず」の意味はよくわかりませんが、AIに聞いたら「の」の意味ではないかということでした。本当かな。

さて、府中市郷土の森の「まいまいず井戸」は復元されたもので、府中市の寿町というところで発掘された平安時代の井戸遺構をもとにして、ほかのまいまいず井戸の形状なども参考に現在の場所に再現されたそうです。府中市郷土の森は多摩川のすぐそばにありますが、寿町は一段高い段丘面(立川面)の上に位置しています。そのため、この復元井戸の地下水位と本来の場所の地下水位は異なる可能性がありますね。

さて、復元井戸ということですので学術的な価値などは低いかもしれませんが、形はとっても面白いのでSLAMでスキャンしてきました。任意座標でデータを作っていますので、方位や標高値などは正しくありません。

点群表示もよいのですが、平面図にした方が面白そうでしたので、井戸の周りの木々を(てきとうに)除去して平面図も作ってみました。まいまいな感じがいいですね。歩いて井戸の底に下りると結構な距離があります。ここから水を組むのは結構な苦労があったのではないでしょうか。

まいまい部分を点群の断面で見ると、地表から3.5~4mくらい掘りこんでいるようです。点群の断面ではちょっとわかりにくいですが、この穴の底に井戸が設置されていました。先ほども書きましたが、標高値は正しくなく相対的なものです。

井戸の底には水がありました。前述したとおり、この復元井戸は復元前の場所(府中市寿町)よりも一段低い段丘面(というか沖積面)の上に復元されていますので、地下水位は復元前の場所とは違っていそうです。東京都のオープンデータを使って復元井戸と多摩川を結ぶ断面図を作ってみると、多摩川の水面からすちばち底面までの高さは3mくらいですので、現在の地下水位はそのあたりにあるのかな、と想像しました。

※断面図の中に「ハケ」と表記しましたが、「ハケ」という呼び名は立川面や武蔵野面のような面の段丘崖に対して使われるものというイメージはあります。ここは現在の川が作った崖みたいな感じではありますが、公園内のこの崖の近くに「ハケの茶屋」もありましたし、ここでは「ハケ」と表記しました。ハケの茶屋の甘酒おいしかったです。

府中市郷土の森はまいまいず井戸のほか、古い建物が移築されていたりと見どころが多いところでした。今回はあまり時間が無くゆっくりできませんでしたがまた行きたいところです。


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三島市立公園 楽寿園の三次元点群データを市に寄贈しました

みてしるのある三島市には、駅前すぐに楽寿園というステキな公園があります。新幹線駅から徒歩すぐにもかかわらず、約1万年前に富士山から流れてきた溶岩と、その上に広がる森や庭園が広がっています。夏場には湧水が池や瀬を満たします。公園の一部には動物園やミニ遊園地もあり、市民や三島を訪れる方の憩いの場になっています。

みてしるでは、さまざまな解析のために計測機器などを用いて対象物の形状を調べたりします。今回、「LiDAR SLAM」という機材のテストを楽寿園で行わせてもらいました。LiDAR SLAMは手に持ったり背中に背負ったりして歩きながら周囲をレーザスキャナで測定できるものです。巨樹・巨木の計測に使ったりしているのと同じ種類の機材です。

今回のテストでは、比較的広い範囲の計測を行ってみたかったので、せっかく測るならステキでいろいろな形のものがある場所がいいなぁと思い、楽寿園に許可をいただき、機材を背負って園内をうろうろさせていただきました。園内の約75,000㎡の範囲を3回に分けて計測し、後でデータを接合して公園全体の三次元点群データとしました。機材のテストとしてはいろいろ課題もわかりましたが、できた点群データは(ちょっと粗いところもありつつ)ちゃんと使えるものですので、せっかくなので活用していただきたく三島市に寄贈いたしました。

7月23日に市役所で市長にデータをお渡しし、ちょっとした解析結果などを報告しました。

こんな感じのデータです↓

楽寿園三次元点群データの様子は今後紹介する予定です。また、データについては三島市がオープンデータとして公開することを検討してくださっていますので、もし公開されたらみなさん使ってみてください。



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熱海来宮神社の大楠

巨樹・巨木シリーズです。

仕事で熱海へ行く用事があったのでお参りをかねて来宮神社の大楠に会ってきました。普段はたくさんの参拝客がいますが、早朝で人がまばらな時間帯だったので、ゆっくりと楠を見学できました。

↓の動画は参拝した後にSLAMで取得した大楠とその周辺の点群データです。大楠以外にもたくさんの木々がありましたので、大楠以外の植物を非表示にして大楠の様子がわかるようにしてみました。動画の最後に大楠の水平断面も入れてあります。

函南町天地神社の大楠を計測した時と違って簡易的な機材を使いました。レーザーの届く距離や、照射できる範囲などが少し劣ります。でも小さな機材で気軽に使えるので、これはこれで便利です。なお、基準点を作ったりしていませんので高さは相対的なもの(計測開始地点における地面の高さが高さ0m)です。

来宮神社大楠 点群断面

木の上の方は機材の性能が高くないことに加えて、レーザーが下層の葉っぱにさえぎられることもあって、ちょっと点群がさみしいですね。ただ、主な枝や幹回りはよく形状をとらえられています。



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巨樹・巨木の姿をみる

静岡県にはたくさんの巨樹・巨木があります。高さ数10mにもなる大きな木がご神木として神社にたたずんでいたり、公園で人々の姿を見つめたりしています。一方で、こうした大きな木もやはり姿を変えています。樹木の健全度を把握したり、落木などの事故を事前に防ぐためにも、木の姿をきちんと記録しておく必要があると思います。

静岡県函南町 天地神社の大楠

写真による記録やメジャーによる計測も大切ですが、大きな木だけあって上の方は測ったりするのが大変です。写真も手前の枝や葉にさえぎられて奥にある枝などは捉えられません。

今回はスタッフの練習もかねて手持ちのレーザースキャナーを使って巨樹・巨木の姿をどの程度とらえることができるか試してみました。スキャンさせていただいたのは静岡県函南町の天地神社にある大楠です。

スキャンに先立ち、スキャンデータを既存の地図ときっちりとあわせるための基準点を作ります。今回はRTK-GNSSで6点くらいの基準点を作りました。基準点が設置できたら手持ちのレーザースキャナーを持って、設置した基準点を順番に回るように歩いて回ります。天地神社の大楠は葉っぱも多く高さもあるため、真下からスキャンしても木の最上部までレーザーが届かなそうでした。そのため、てっぺんを見上げられるよう大楠から離れた場所からも狙いました。

レーザースキャンじたいは20分程度で完了しました。できた点群が↑です。大楠だけでなく神社全体をスキャンし、点群を高さで色分けして表示しました。近くにある2階建ての建物や神社の鳥居のサイズと比べると木々の大きさがわかると思います。

神社の参道に沿って断面を作ってみるとこうなります。大楠の高さは約31mくらいで、大きく枝を広げた立派な姿をしていることがわかります。大楠内部の枝の形状もかなりとらえていますが、樹頂付近はさすがに点群が薄くなっています。この大楠のように樹勢がよく葉が多い場合にはドローンを使ったレーザースキャンも併用して上からも計測した方がいいかもしれません。

樹木の点群データ活用や、巨樹・巨木計測に関してはこれからも続けてみようと考えています。

【追記】天地神社大クスの3DGS映像作りました


天地神社の場所


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